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真朱

【しんしゅ】天然の硫化水銀を主成分とする朱色顔料のことです。のちに人造顔料の「銀朱(ぎんしゅ)」が作られたため、天然顔料を強調し本物という意味の「真」が付けられるようになりました。古くは朱肉にも真朱が用いられていたそうです。

一斤染

【いっこんぞめ】紅花で染めた淡いピンク色のことです。紅花はとても高価だったため、平安時代、紅染めは庶民には着用が許されない禁色(きんじき)でした。しかし一疋(いちびき)の絹布を染めるのにわずか一斤(約600グラム)の紅花を使うこの淡い紅色だけは許されていました。当時の庶民は濃い紅色に強い憧れを持ちながらも、実際には着ることが許されず、そのあきらめの色として生まれたのがこの一斤染だったというわけです。

藍鼠

【あいねず】藍の色みが加わった鼠色のことです。江戸時代には「四十八茶 百鼠(しじゅうはっちゃ ひゃくねず)」といわれるほど、茶や鼠(グレー)が流行しました。藍系統の鼠色にはこの他にも「藍気鼠(あいけねず)」「藍味鼠(あいみねず)」など微妙な色の差の色名が数多くあります。

藤鼠

【ふじねず】藤色よりも鮮やかさを抑えた紫みの灰色のことです。江戸時代にはこの色で染められた着物が女性をとりこにし、明治時代になると花柳界から一般の人々まで広く流行しました。

菫色

【すみれいろ】その名のとおり、菫の花のような濃い紫色のことです。菫は春の野に咲く可憐な花で、古くから親しまれてきました。色名として愛好されるようになったのは明治以降で、英語のバイオレットの訳語になったことから、西洋風なハイカラな印象を当時の人は持ったようです。

東雲色

【しののめいろ】東の空が夜明けの光に色づき始めたようなほのかな黄赤色です。曙色(あけぼのいろ)ともいいます。江戸時代には裾の部分を少し白く残し、それより上を紅や紫、藍などでぼかしながら染めていく曙染が流行しました。

桑染

【くわぞめ】桑の根や樹皮を煎じて染めた色です。江戸時代には「桑茶」と呼ばれ、粋な男性の間で桑染め小紋の足袋が流行したそうです。「お洒落の基本は足元から」などとよく言われますが、今も昔も変らないのですね。

朽葉色

【くちばいろ】朽ちた落ち葉の色のことです。秋になり木々が葉を落としていく様を、朽葉色を基本にして、まだ少し緑が残る青朽葉、黄色く色づいた黄朽葉、真っ赤に紅葉した赤朽葉と使い分け、季節の移ろいを色で繊細に表現していました。「朽葉48色」と言われるほどバリエーションの多い色です。

躑躅色

【つつじいろ】赤い躑躅(つつじ)の花のような鮮やかな紫みの赤のことです。『枕草子』の中で清少納言は、束帯(公家の正装)のとき袍(ほう)と半臂(はんぴ)の間に着る下襲(したがさね)という衣服について、冬に最適な色には躑躅色や桜を、夏には二藍と白をあげています。冬には暖色、夏には寒色を着て体感温度を調節する「くらしの知恵」は、古代から取り入れられていたのですね。

新橋色

【しんばしいろ】明治中期、欧米から輸入された化学染料で染めた鮮やかな青緑色のことです。天然染料にはない鮮やかさがハイカラな色とされ、東京新橋の芸者たちがこぞって和服に取り入れて愛用したのが色名の由来です。当時の新橋は政治家、高官や実業家たちが通う高級料亭が多く、質の高い芸者たちが集まる流行発信地でした。今ではすっかりほろ酔いお父さんのイメージが定着しちゃいましたね。