《対談:住×色彩4 Part?》ミスブランチの赤いバラ

2006.12.23

《対談:住×色彩4 Part?》ミスブランチの赤いバラ

桜「今日のテーマは、尊敬する人物について、ということでいかがでしょうか?
そういえば私、中学生の頃だったか、尊敬する人物について作文を書けという課題を与えられ、なぜかキュリー夫人のことを書いた記憶が…」

安「…?? 桜井さんはカラーの仕事してるのに、何で?」

桜「研究者として一途なところに惹かれたのかもしれません。一流というのは“一つの流れ”と書くように、どの世界においても偉大な人というのは一途なところがあるんじゃないかと思います。」

安「僕は、尊敬している人や憧れている人はたくさんいるな。コラム20回分ぐらい書けると思うよ(笑)
あえて絞り込むとすれば…う〜ん、ちょっと時間ちょうだい。」

(待つこと数日…)

安「今回は若いときに一番ガツンときた、感動したものをデザインした人で、その後もずっと影響を受けてきた人物を2人に絞りこんだよ!!
それにしても、毎回写真3枚というのは厳しいね(笑)」

(先生も対談も4回めとなると、いろいろな事情をご理解いただいているようでして・・・)

安「まずは、倉俣史朗(1934〜1991)だね。
【画像:左】は“ミスブランチ”という椅子なんだけれど、アクリルの中に赤い造花のバラが入っている。初めてこの椅子を見た時、真っ白い空間にポツンと1脚だけ置かれていて、まるで空中にバラが浮遊しているようだった。ものすごく神秘的で思わず息をとめたくらい。」

桜「“ミスブランチ”というネーミング、インパクトがありますね!」

安「映画『欲望という名の電車』の主人公ブランチが、赤いバラの服を着ていたところにヒントがあるらしいよ。でも・・・映画はモノクロだったはず。
きっと、彼にしか見えていなかったものがあったんだね。」

桜「一流の人物ですから、きっと彼の世界があったのでしょうね。
ところで、その隣の椅子は無色透明ですが・・・やはりアクリル製ですか?【画像:中央】」

安「こっちは硝子の椅子。色はないんだけれど硝子の質感が際立っていて、よりどころのない浮遊感と、割れるのではないかという潜在的緊張感があるんだ。
無色透明であるにも関わらず、ものすごく存在感のある椅子だよ。」

桜「インテリアの世界でもカラーコーディネートは大切な要素だと思うのですが、あえて色をつけないという選択もありなんですね。」

安「倉俣史朗は、“音色という言葉の透明な音の世界に色を見、感じることに魅せられる”と良く言っていたそうだよ。色というものに奥行きを与え、形のない物に形を与える。天才デザイナーの強い欲望だったようだね。
【画像:右】は“カビネ・ド・キュリオジテ”という飾り棚。この棚も、色のついた気体が液体になって固まったような錯覚を与えてくれる。」

桜「音色という言葉の透明な音の世界に色を見るんですか…。奥が深すぎる…。」

安「インテリアを設計するとき、ついつい、自分の提案したい家具や照明を目立つ物にしてしまうことがあるんだけれど、倉俣史朗のデザインに初めて触れた時、“見えない、主張しないデザイン”というものがあることにショックを受けたんだ。」

(Part?に続く)

【2006年9〜10月 記】

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