カラーユニバーサルデザインについて考える〈その1〉

2009.06.15

カラーユニバーサルデザインについて考える〈その1〉


私がカラー(色彩学)の勉強を本格的に始めた頃、まだ周囲には理解してもらうことができませんでした。

「カラーの勉強をしています」
「え?それなに?」
「色彩学です」
「そんなこと勉強して何になるの?」
「身の回りすべてに色が付いていますから、より良い配色や色づかいについて提案する仕事がしたいんです…」
「ふぅーん、それって、おカネになるの?」
…とまあ、どのような業界の人と出会っても、こんな会話が繰り広げられる時代でした。

それから20年近い月日が経ち、
今、時代の流れとしては「色で売る」という商品企画の考え方や、すべての人にとって見えやすい色づかいである「カラーユニバーサルデザイン」が求められるようになりました!

今回から、不定期ではありますが、「カラーユニバーサルデザイン」について一緒に考えてみたいと思います。

まずは、今回掲載させて頂いた3種類の「色相環」を比較してみてください。
◆いちばん左が、もっとも一般的な色の見え方。
◆中央は、眼の中の、赤を感じる視細胞(網膜上にあるL錐体)が機能しない人の色の見え方(シミュレーション)。
◆右は、眼の中の、緑を感じる視細胞(網膜上にあるM錐体)が機能しない人の色の見え方(シミュレーション)。

もともと、色の見え方には、かなりの個人差があると言われているのですが、なかでも、中央や右の画像のような見え方をする色覚特性を持つ人は、意外と多くいらっしゃいます。

日本人男性の20人にひとりの割合(約5%)、ヨーロッパでは約8〜10%の男性が、赤と緑の区別が難しい色覚特性をもっていることが分かっています。
(色の見え方に関する遺伝子情報がX染色体上に存在するため、X染色体を一つしかもたない男性に出現率が高いのです)

世界的な視野で統計を取ると、AB型の血液型をもつ人よりも色弱の人のほうが多いのだとか!


また、一般的な色の見え方をする人の中にも「加齢に伴う色の見えの変化」というものがあり、これもまた、個人差がとても大きいのです。

加齢に伴う色覚の変化としては、眼の中のレンズ(水晶体)が白く濁り、黄色く色づくことによる色の見えの変化があり、これが進んだ状態を白内障(はくないしょう)といいます。

このように、色の見え方というのは個人差がありますから、これからのカラーデザイナーやカラーコーディネーターは、すべての人にとって見えやすい色づかい=カラーユニバーサルデザインを知っておく必要があると痛感しています。


※参考文献『カラーユニバーサルデザイン』NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構[CUDO]著/ハート出版

※掲載画像は自作の色相環を『東洋インキ ユニバーサルデザインツール』で変換したものです。

※今回のコラムでは色覚特性の解説について、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構[CUDO]による呼称を使わせて頂きました(P型・D型)

※眼科学会ではP型を1型2色覚または1型3色覚と呼び、D型を2型2色覚または2型3色覚と呼びます。

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