赤はあなたの方へ向かってくるあたたかい色〜ブルーナの色■▲●赤・黄・青の話〈1〉

2008.03.12

赤はあなたの方へ向かってくるあたたかい色〜ブルーナの色■▲●赤・黄・青の話〈1〉

今日ご紹介するのは、小さな子どもの為の絵本です。1955年にオランダで初めて出版され、1964年に日本で最初の翻訳本が出版されました。

このシリーズの主人公は小さなうさぎの女の子。名前はミッフィー。最初に日本に紹介された当初は、うさこちゃんという名前でした。

私も小さい頃、うさこちゃんの絵本を3冊持っていました。どれも大好きで、ボロボロになるまで何十回とめくった記憶があります。お話の展開も、絵本の中の絵も、ぜーんぶ覚えていました。何度見ても飽きない不思議な絵本だなぁ・・・と記憶しています。

絵本の作者はディック・ブルーナさんという1927年生まれのオランダ人。今では素敵なおじいちゃんですが、ずっと変わらぬコンセプトで、意欲的に作品を作り続けています。今までに90種類以上の絵本が出版され、30数か国に翻訳され、8000万部以上が出版されたというから驚きです!

この絵本の特徴は、第一にその色にあります。
「ブルーナ・カラー」と呼ばれる赤・黄・青・緑・茶・グレーの6色だけで構成されているからです。もともとは、赤・黄・青・緑の4色だったのですが、デザインの都合上どうしても必要になり、あとから茶・グレーも使うようになったのだそうです。

この絵本の第二の特徴は、登場人物が常に正面を向いていること。
「読者といつも対話していたい」というコンセプトなんですって!何度見ても飽きない理由は、ここにあったのかもしれません。

では再び、「ブルーナ・カラー」に話を戻しましょう。

『ディック・ブルーナのすべて』(講談社)の中に、ブルーナさん自身が、それぞれの色のもつメッセージについて語っている部分があります。

「赤はあなたの方へ向かってくるあたたかい色」
〜ミッフィーが幸せな気持ちになる場面では、背景が赤になっています。

「黄色も前に出てくる色。赤と緑があたたかいのは、黄色が入っているから」
〜家の中を描いている場面で、背景は黄色です。家の中はあたたかいものであるべきという考えからきています。

「青はよそよそしい色、そして冷たい色。あなたから去っていく色。怖さや寒さを描くときに使います」
〜雪の降る中を歩く場面や、サーカスの少年が不安な気持ちで綱の上を歩く場面で背景は青です。

「緑は伝えたいことを伝えるために必要な色」
〜植物や自然を表す色。戸外を象徴する大事な色。

ブルーナさんの色づかいは「デ・ステイル」に大きな影響を受けています。
「デ・ステイル」とは20世紀初めにオランダで興った抽象芸術運動のことで、徹底した直線構成と赤・青・黄・無彩色に限定した色づかいにその特徴があります。

ディック・ブルーナ公式HP
(ブルーナ・カラーを実際にご体験ください)


参考文献 『ディック・ブルーナのすべて』 講談社

  

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